相続放棄をする場合の家の片付け

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年04月04日

1 相続放棄の効果

 まず前提として、相続放棄が法律上、どのような効果を持つかについて説明します。

 相続放棄(ここでいう相続放棄とは、裁判所に対して相続放棄申述書を提出して行う手続きのことです。)は、はじめから被相続人の相続人ではなかったことになるという効果があります。

 これにより、被相続人の相続財産を一切取得できなくなると同時に、被相続人の相続債務を一切負わずに済むことになります。

 別の観点から見ますと、相続人ではなくなってしまった以上、被相続人の財産に対しては、原則として一切手を付けることができなくなります。

 感覚的な表現をすれば、被相続人とは全くの他人になってしまうため、他人のものを勝手に持って行ったり、売ったりすることはできないということになります。

2 法定単純承認事由

 さらに、相続放棄に関しては、法定単純承認事由というものが定められています。

 法定単純承認事由に該当する行為をしてしまうと、相続放棄の効果が認められなくなってしまう可能性があります。

 具体的には、相続財産の処分にあたる行為であり、被相続人の財産の売却や廃棄などがこれにあたります。

3 被相続人の家の片づけ

 一方、実務上とても悩ましいのが、被相続人の家の片づけで、特に賃貸物件に残された家財道具等(残置物ということもあります)の取り扱いです。

 原則とおり相続放棄の効果を当てはめるのであれば、被相続人の持ち物については一切関わることができない旨を主張し、賃貸物件に残された家財道具等の片づけは何もしないということになります。

 貸主や管理会社がしっかりしている場合、相続放棄の効果も理解していて、対応してくれることもあります。

 もっとも、必ずしも貸主側で対応してくれるとも限りません。

 場合によっては相続放棄をする旨の説明には耳を貸さずに、早く残置物を片付けて部屋を空け渡すよう、強く迫ってくることもあります。

 被相続人の所有物の処分については、形見分け程度のものであれば、法定単純承認事由に該当しない旨、裁判所が認めています。

 もっとも、残置物すべてとなると、話が変わってきます。

 残置物が古い家財道具や着古した衣類であるなど、売却しても値段が付かない、または逆に処分費が必要になる場合は、そもそもいわゆるゴミであり、財産ではないとして、これらを処分しても法定単純承認事由に該当しないという解釈もあり得ます。

 もっとも、現行法上、裁判所が明確に認めているわけではないため、どうしてもリスクがある点だけはお含みおきをいただく必要があります。

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