相続放棄でまず知っておくべきこと

文責:所長 弁護士 鳥光 翼

最終更新日:2020年07月17日

1 相続放棄に強い弁護士を選ぶ

⑴ 弁護士だけが相続放棄の代理人になれる

 相続放棄の申述を裁判所に対して行う際,弁護士であれば「代理人」になれます。

 代理人であれば,相続放棄申述書作成・提出,裁判所からなされる質問等にも全て対応できます。

 代理人がいないと,裁判所対応は本人が行わなければなりません。

 裁判所対応は,専門的な知識がないと難しく,相続放棄の手続きが認められなくなる可能性さえありますので,相続放棄に強い弁護士を代理人にすると安心です。

 

⑵ 相続放棄は,対応すべき問題がたくさんある

 相続放棄は簡単ではありません。

 戸籍謄本類などの必要書類を揃えることですら,経験のない方には大変なことです。

 そのうえ,被相続人を取り巻く財産や債務の債権者,公的機関との関係などに対し,一つ一つ対応していく必要があります。

 このようなものに対し,相続放棄するのだから全部無視してよいというアドバイスも時折見かけます。

 しかし,人情を考えますと,これは簡単なことではありません,

 被相続人が住んでいた賃貸物件の大家さんから連絡が入り,完全無視を決め込むというのは,心理的にとても辛く感じる方もいらっしゃいます。

 債権者から支払請求が来たら,平然としていられないと思います。

 そのような場合,弁護士を通じて,相続放棄の手続中であることを説明し,請求等を止めてもらうことが大切です。

2 残置物対応,不動産対応は弁護士に相談

 着古した衣類や,古い家財道具など,いわゆる残置物の処分は相続放棄を検討している相続人を悩ます代表格です。

 厳格に考えれば,たとえゴミでも被相続人のものであった以上,相続財産に該当すると考えることもできます。

 残置物については,裁判例では,財産的価値のないものについて,形見分け程度の処分であれば単純承認にはならないとされています。

 一方,残置物の全てまたは大半を処分した場合についての判断は確立していません。

 相続財産を利用処分する意思を示すことを単純承認事由とすることの趣旨からは,財産的価値のない物を処分したことは単純承認事由にあたらないと解釈することはできます。

 しあkし,判断が確立していない以上,リスクを最低限に抑える必要があります。

 どうしても残置物を処分しなければならない場合,処分したものの中に財産的価値のある物がなかったことを説明できるような準備が必要ですので,具体的な手段について,専門家に相談することをお勧めします。

 

 被相続人が不動産を所有していた場合,後順位相続人を含め,すべての相続人が相続放棄をすると,その不動産は所有者不在となり,相続財産法人になります。

 他方,相続放棄をした人には,この相続財産に対する管理責任が残ります。

 相続を放棄した者は、放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるようになるまで、自己の財産と同一の注意をもって財産の管理を継続しなければならないとされています。

 相続放棄をしたとしても,被相続人が有していた不動産に関連して将来何らかの責任を負わされるリスクを持ち続けることになります。

 最も根本的な解決方法は,相続財産管理人の選任を申立てを行うことです。

 申立てには費用がかかるほか,裁判所に予納金を納めなければならず,金銭的負担は相当なものとなりますので,専門家と相談し,諸々の事情を総合的に考えて判断するべきです。

3 被相続人死亡後3ヵ月以上経過している場合

 相続放棄の期限は,「相続の開始があったことを知った時」から3ヵ月以内です。
 これを過ぎると,相続放棄をすることができなくなります。
 「相続の開始があったことを知った時」とは,①相続開始の原因たる事実及び,②それによって自分が相続人となったことを知った時,であるとされております。

 事情により,被相続人の死亡から3か月以上経過していても,①又は②のいずれかが到来していないと主張できる場合もあります。
 このような事情を家庭裁判所に効果的に主張するためには,相続人の方の個別事情を詳しく伺い,具体的な事実を書面にまとめて提出する必要があります。

 そのためには,弁護士のサポートが欠かせませんので,弁護士に相談しましょう。

4 生前の相続放棄はできない

 相続放棄は,被相続人が存命のうちに行うことはできません。

 もっとも,被相続人が存命のときから,借金を多く背負っているなどの状況を知っているのであれば,予め準備をしておくことはとても大切です。

 残置物となり得る家財道具などを,被相続人の了解を得て処分する,信用情報機関から債権者と債務額の情報を取り寄せておくなどをしておけば,相続放棄の判断がしやすく,かつ相続放棄手続で苦労することが減ります。

5 相続放棄には順番がある

 相続には順位があります。

 被相続人の子(代襲相続人含む)が第一順位,直系尊属が第二順位,兄弟姉妹(代襲相続人含む)が第三順位となります。

 先順位の相続人がいる場合,先順位の相続人が相続放棄をしない限り,後順位の方は相続人になることはありません。

 子供が相続人である場合,まず初めに相続放棄を行う必要があります。

 子供がいない方の場合,第二順位である親が相続人となります。

 親も,その上の親も亡くなられている場合,兄弟姉妹が相続人となります。

 知っておくべきことは,先順位の相続人が相続放棄をするまで,後順位の方は相続放棄手続を行えないということです。

 相続放棄手続は相続人になってからでなければ行えないので,先順位相続人が相続放棄を完了するのを待つ必要があるのです。

 相続人全員が相続放棄を完了するまでは,想定外に時間を要する可能性がありますので,被相続人の債権者に請求を止めてもらっている場合等は注意が必要です。

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